生物学探偵セオ・クレイ 森の捕食者

あまり期待していなかったのだが、予想外の拾い物だった。
生物学者が探偵役なのだが、動物に詳しい生物学者ではなく、パターンを解析する情報分析のプロである。
臆病なくせに頑固で、分からないことがあると、周りも見ずに突き進む。
その危うさが、読んでいて心配になる。
そして、後半アクション小説としても面白い。
映像化したら良いと思う。

山の中で女性研究者が殺され、重要参考人として尋問されたのは、彼女の大学時代の教師であるセオ・クレイだった。
女性を殺したのは熊だと判明し、セオの容疑はすぐに晴れたが、現場の証拠からセオは警察の結論に疑問を抱く。
周囲に怪しまれながらも独自の方法で捜査を進めたセオは、驚くべき犯人に突き当たる。

ここからは、ネタバレを含んだ感想を。
舞台は現代だが、SFのような捜査が行われていくのが楽しい。
セオは現場で採取された熊の毛から、熊のDNAを解析し、熊を研究している施設のデータベースを使って、熊を特定、そのテリトリーの情報を取得し、警察が違う熊を犯人としていることを発見する。
DNAから熊の個体を識別できるとは、驚きである。

セオは犯人の行動パターンを見つける方法も面白い。
失踪者数と人口規模からAIを使って、異常なパターンを発見し、犯人の移動ルートを予想する。
そのルートは、捕食者であるサメの巡回路に似ている。
とても現代的な、新しいタイプの探偵である。

警察の注意を引くために、次々と死体を掘り出し、匿名の通報をする。
後半、犯人との戦いは、知的なミステリーから、派手なアクションへと変わる。
ドーピングでなんとか立ち向かうセオは、痛ましく、マッチョでないところが良い。

続編も読んでみよう。

研究者はテキストファイルをメールし、DNAを複製する研究所にそれをアップロードする。その後、DNAの複製が空の細胞の中に落とされると、やがてそれは成長してもとの有機体と瓜ふたつのものができあがる。
猫の写真を送るみたいに命をメールで届けられると思う、私は未だに興奮を覚える。

このグラフが示しているのは、人口規模からは予想できない失踪者間の関連性だ。また、そのループは特定の州間高速道路に沿って走るが、それ以外の道路には寄りつかない。
生物学をやっている、データの様々な現れ方に慣れてくる。サケは川をさかのぼり、群れを作る動物はかなり直線的なパターンで移動する。鳥はループに沿って飛ぶ。
私がながめているのは別のパターンだ。
非常に見慣れたパターン。
これは捕食者の巡回路だ。

MAATの地図にある紫の帯に含まれる赤い点の一つ一つが当たっていると分かった。これは非常に恐ろしい結論につながる。
統計的に行って、予想が当たり過ぎる時は何かがおかしい。それはMAATが正確無比と言う意味ではないー赤い点よりも、もっともっと多くの遺体があるということだ。

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