パードレはそこにいる

珍しいイタリアのミステリー。
人名や地名が覚えにくいが、独特の雰囲気があった良い。
事件のトラウマで休職している女捜査官コロンバと自身が誘拐された過去を持つ子供探しのエキスパートでありダンテが、誘拐された子供の行方を追う。
ちなみに「パードレ」とは、イタリア語で父親の意味らしい。

面白いコンビのバディ小説だと思っていたが、2人の症状はかなり深刻。
コロンバは突然パニック症候群に陥るし、ダンテの閉所恐怖症は半端ではない。
ヘリコプターに乗せるためには、その前に睡眠薬で眠らせる必要があるくらいだ。
事件捜査以前に、彼らの日常生活が心配になる。

ありがちな子供目当てのサイコパスものだと思ったら、もっと奥が深かった。
後半、国家ぐるみの陰謀が明らかになっていく。
よくできたエンターテイメントになっている。

周りの反応からするとかなり美人らしいコロンバは、見かけによらずセリフや行動がハードボイルドだし、ダンテの変人ぶりも堂に入っている。
このキャラクターだけでもシリーズ化できると思ったら、やはりシリーズ化されているようで、3部作で完結らしい。

それで、外の世界について勉強するうちに、そこで育った人よりも、自分がいくつかの仕組みをよく理解できることに気づいたんです。
物事を見るには、ある程度の距離を保つことが必要です。そして、僕にはそれができた。
たとえ自分の意思ではなくても。その距離感覚を、必要なときには今でも取り戻すことができます。失踪者の習慣で何か変わったことがないかどうかがわかる。身の回りのものの傾向を見て、何が好きで、どんなことを心配しているかを見抜く。

「娘さんがいるの」コロンバはびっくりしてして尋ねた。
「パートタイムの父親さ」サンティーニは答えた。「何だ? 俺みたいな男は生殖活動しちゃいけないとでも考えているのか?」
コロンバは肩をすくめた。「自宅と職場を往復して、ケツを舐めだけの生活だと思っていたから」

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