ミスター・メルセデス

キング初のミステリー!
初か?という気もするが、元刑事と犯罪者の戦いというストレートなミステリーは無かったと思う。
むかしのキングに戻ったようなしつこい描写と陰惨なイメージが、昔からのファンには嬉しい。
何と、キャラクター小説だったりする。

さすがキング!と思わせる文章のうまさに引き込まれる。
ディテールの書き込みが素晴らしい。
殺人の快楽で射精した時の用心にコンドームをして、ひき逃げする犯人。
どうしたらそんな発想が出てくるんだ。
主人公である元刑事ビル・ホッジスの引退後の寂しさと危うさが、拳銃をもてあそび、口に咥えてみるという描写で見事に表現されている。
キング自身の作品のネタがさりげなく登場するのもファンには嬉しい。

終盤、イタイだけの女だと思っていたホーリーが大活躍。
母親からのプレッシャーから精神安定剤を手放せなくなり、なぜか元刑事の爺さんに惹かれるおかしな女だと思っていたが、とんでもなかった。
セリフもカッコいい!
この続きでは、ビル・ホッジスとホリーが探偵事務所を開くらしい。
是非読んでみたい。

そのうち二台は、メルセデスの後部バンパーに接するほど近くまで迫っていた──昔のホラー映画に出てきたプリマスのようにグレイの大型セダンがひとりでに動きだし、その場から逃げだすとでも思っているかのように。

ホリーはため息をつく。
「おまけにタバコも切らしちゃった」
「そんなもの吸ってると死んじゃうぞ」ジェロームがいう。  
ホリーは無表情な目をむける。
「そのとおり。それもタバコの魅力のひとつ」

「たまにこんなふうに、わたしよりも頭のいかれた人に出くわすことがあるっていうだけよ」ホリーは答える。
「そういう出会いがあると元気になっちゃう。ひどい話なのはわかってるけど、自分でもどうにもならない」

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