若い読者に贈る美しい生物学講義

タイトルにあるように「美しい」とは特に思わなかった。
体系的とは言えないが、興味深い生物学のトピックを分かりやすく説明している。
知っていると、ちょっと友達に自慢できるようなネタが多くある。
覚えていられるほどの記憶力がないのが残念だ。

まず「科学は100%正しいわけではない」というところから入る。
演繹は100%正しいが、既存の情報だけで成り立っているので進歩がない。
仮説を立てて検証する科学は、その構造上100%の正しさを保証できないが、良い仮説に向かって永遠に進み続ける。

生物とは何か?
一般に生物の条件は次の3つである。
・外界と膜で仕切られている。
・代謝を行う。
・複製を作る。

「外界との膜」については、膜を作っている物質と構造、どうやって膜を物質が通り抜けるか、ということを化学的に説明している。
疎水性の物質を使いながら、内部に水を溜め込むための構造が興味深い。

「代謝」について、生物は「物質の流れ」だとしている。
常に外部から物質を取り込み、エネルギーを取得し、物資を排出している。
自動車などに似ている部分もあるが、生物は、変化しつつも形は変わらない「散逸構造」である。

生物は、自己の「複製」を作るが、全く同じものを複製するわけではない。
複製には必ず変異が入り込み、少し異なる個体が生まれる。
だからこそ自然選択による進化が発生する。

生物の分類は、動物と植物だけではない。
実は、この2つは生物全体の中の一部に過ぎない。
どちらでもない生物のグループが存在する。

生きている樹木のの大部分は死んでいる。
中心部の心材は既に死んでおり、生きているのは外部近くの辺材だけである。
だから、木が倒れて死んでも、あまり変化がない。

直立二足歩行する生物は人間だけである。
直立二足歩行によって食物を手で持って、移動できるようなった。
そして、社会制度を一夫一婦制としたことで、オスがメスと子供に餌を運ぶことになり、種が安定した。
という仮説もある。

その他にも、次のようなテーマが取り上げられている。
・生物多様性
・進化と進歩
・遺伝のしくみ
・免疫システム
・がんの進化
・IPS細胞

生物学に興味を持つには、良い本だと思う。

科学では、仮説による説明や予測を演繹にしなければならないので、仮説の正しさを保証する仮説形成や検証が、どうしても演繹の逆になってしまう。だからどうしても、仮説に対して100パーセントの正しさを保証できないのである。
新しい事柄を知るためには、100パーセントの正しさを諦めなくてはならない。これは仕方のないことなのだ。それでも、私たちは知識を広げてきた。真理に到達できなくても、少しでも、そこに迫ろうとして。

ミセルはボールのような形で、リン脂質が外界と内部を仕切っている。だがミセルでは、細胞は作れない。細胞はその内部で化学反応を行うのだから、内部が水でなくてはいけない。ミセルの内側には疎水基が突き出しているので、内部を水で満たすわけにはいかない。ミセルの内部には空気などが入る。
では、内部も水にするには、どうしたらよいだろうか。それには、リン脂質を二重膜にすればよい。肢と肢を向かい合わせにして二重膜を作れば、ボールの内側にも親水基を出すことができる。

生命が誕生したのが40億年前だとすれば、現在生きている細菌は、40億年ものあいだ細胞分裂をし続けてきたのである。たとて1回でも分裂が途切れたら、それで終わりだ。その後に子孫を伝えることはできない。だから、現在生きている細菌は、みんな40億歳だ。

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