クララ殺し

「アリス殺し」に続くファンタジー殺人事件。
基本的な設定として、我々の世界とファンタジー世界がつながっており、ファンタジー世界の殺人がそのまま我々の世界へ反映される。
面白いのは、真の世界はファンタジー側だということである。
前作の舞台は「不思議の国のアリス」だったが、今回は、また違う物語である。

登場人物としては、少し頭の弱いトカゲのビルが前作から引き続き登場している。

まず、タイトルに騙された。
日本人が「クララ」と聞けば、それは「アルプスの少女ハイジ」に登場する少女しかありえない。
それも、車椅子に乗っているのだから、疑問の余地がないのだが、これがひっかけだった。

前作よりもファンタジー世界のキャラクターと現実世界の人物の関係がややこしい。
ベースになっている物語も知らないので、うまく世界に入り込めない。
また、犯罪の動機も分かりにくく、ミステリーとしては、どうかと思う。

ただ、前作通り不合理なトカゲの会話が楽しい。

「あなた、今、しょっぱくないって言ったじゃない、ビル」
「うん。言ったよ。覚えてる。今、言ったばかりだもん。五分も前だったら、忘れるかもしれないけど」
「だから、湖なのよ」
「えっ? 五分経ったら忘れるっていうことが湖ってことなの?」
「こいつと真剣に話す意味はないと思うぞ、クララ」老人は 蔑むような目で言った。

「ああ。そうだった。……ええと。何を訊くんだったっけ?」
「訊きたいと思ったのは君だからね。僕がいくら考えてもわかりやしないさ」
「じゃあ、何を訊いて欲しい、ナターナエル?」
「えっ? 僕が考えるのかい?」
「そりゃ、君の問題だからね」ビルは自信たっぷりに言った。
「いや。君の問題だよ」
「ほら。君の問題だ」
「それはつまり」ナターナエルはうんざりとした表情で言った。
「君の言う『君』と僕の言う『君』が同一人物だと思ってるってことなのかい?」
「ええ。同じ名前なんだから、同一人物なんだろ」

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