任務の終わり

キング初のミステリー・シリーズ「ミスター・メルセデス」も最終巻である。
植物人間になったと思われていた1作目の犯人「メルセデス・キラー」が復活する。
元刑事の探偵ホッジスとの宿命の対決が幕を開ける。

何が驚いたって、本作はホラーなのである。
1作目、2作目と純粋なミステリー、探偵小説を書いてきたキングが、ここに来て古巣に戻ってきた。
喜ぶべきなのだろうか?
「13日の金曜日パート2」のような展開である。
植物状態だったブレイディは、意識を取り戻しただけでなく、他人の意識に入り込み、コントロール出来るようになったのだ!
もう、完全にオカルト、ホラーである。

他人の意識に潜り込む方法が面白い。
古いゲームに夢中にさせて、そのすきに入り込んでしまうのだ。
とてもバカバカしい方法なのだが、キングの手にかかると素晴らしいイメージで描写される。
むかしながらのキングの得意技、イメージの繰り返しである。

ホッジスとホリーのコンビによる探偵小説がもう読めないのは悲しい。
しかし、キングの「アウトサイダー」では、ホリーが探偵として登場する。
ドラマ版のホリーは、なぜか黒人だったが、原作もそうなのだろうか?
今後もホリーは活躍するのかもしれない。
そうだと良いのだが。

画面で泳いでいる魚を目にするなり、なにが起こっていたのかは察しとれた。ほかでもない、このゲームをつくった愚か者たちは──偶然のことにちがいないが──ゲームをつくると同時に催眠効果もつくりだしたのだ。だれもが催眠効果の影響を受けるわけではないだろうが、影響される人間もそれなりに多いだろうとブレイディは思った。

「おれたちにはこれからもずっとパリの思い出があるんだよ」ホリーは母音を引き延ばしたボガートの物真似で、名科白を口にする。  
ああ、たしかに風変わりな女だ。いや、唯一無二といってもいい。

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