20世紀SF①1940年代

SFの歴史を調べなおそうとすると、意外に文献がない。
そんな中、年代ごとに代表的な短編を集めたこのシリーズは、得難い資料である。
1冊目は、今のかたちのSFが生まれた時期と言っても良い1940年代の作品が集まれている。
メンバーは、昔からのSFファンならばワクワクする顔ぶれである。

星ねずみ フレドリック・ブラウン
驚くことにミッキーマウスの話だった。ブラウンらしいユーモアSF。

時の矢 アーサー・C・クラーク
ちょっと変わったタイムトラベルもの。
化石の発掘がタイムトラベルに繋がる、クラークにしては荒唐無稽な小品。

AL76号失踪す アイザック・アシモフ
自分が月に居ると勘違いしたロボットが引き起こす騒動をユーモラスに描いている。

万華鏡 レイ・ブラッドベリ
宇宙船の事故で弾き飛ばされた飛行士達の束の間の想いを、ブラッドベリらしく哀愁豊かに描いている。
サイボーグ009の最終回の元ネタである。

鎮魂歌 ロバート・A・ハインライン
宇宙に憧れた男の最後を、未来世界でのアクションを交えて語る。とてもSFらしい一品。
忘れていたが、ハインラインのSFは面白いのだ。

美女ありき C・L・ムーア
生前の記憶を移植されているが人間とは異なる存在となったアンドロイドの物語である。
この不気味さは、21世紀のいまに書かれてと言っても信じられる。

生きている家 ウィリアム・テン
テンについては、作品を読んだ記憶はなく、イメージもない。
家が住民を選び、逃さないというこの話は、軽いホラーもしくは「奇妙な味」の作品というところだろうか。

消されし時を求めて A・E・ヴァン・ヴォート
時間を行き来する奇妙な作品である。
クリストファー・ノーランの「テネット」の原案かと思ってしまう。
そして、こちらも分かりにくい。

ベムがいっぱい エドモンド・ハミルトン
「キャプテン・フューチャー」のハミルトンとは思えないユーモアSFだった。
火星には変な生物がたくさん居るのだが、その原因が馬鹿馬鹿しい。
そして、彼らの攻撃方法も・・・

昨日は月曜日だった シオドア・スタージョン
フィリップ・K・ディックかと思ってしまう短編である。
世界は毎日作られており、作成中の曜日に間違って紛れ込んでしまった男の話である。
ディックほど病んではいない。

現実創造 チャールズ・L・ハーネス
人間が居るから世界がある、という人間中心主義の作品。
読んでいて、途中で分からなくなった。

「視覚は、五感のうちでもっとも洗練されたものだ。必要性からいえば最後になる。他の感覚は、われわれを生命の根元に結びつけている。それによってわれわれは、想像以上に鋭敏なものを感じとっている。(中略)視覚は、それらの感覚に比べれば、冷たい、知的なものだ。彼女がいま頼れるものはそれしかない。その意味で、彼女はもはや人間ではない」
美女ありき

女は真剣な眼差しで、彼を見つめた。「すぐ、おわかりになると思うわ。わたしたちは、この瞬間のために、すべてを計画してきたのよ。わたしやあなたやプライスさんのいる、この蓋然世界は、あと数時間しかもちません。力があやうい均衡でつりあっているの。ちょっとおかしく聞こえるかもしれないけど、わたしたちは時間を逆行しているのよ」
消されし時を求めて

SF作家のアイザック・アシモフは、63年にアメリカのSFの発展を三段階に分類整理した。それによればー
第1段階(1926〜38年)冒険主流
第2段階(1938〜50年)科学技術主流
第3段階(1950〜  )社会学主流
となる。

カナダの批評家ジュディス・メリルの言葉を借りれば、「キャンベルがSF界を支配したこの最初の数年のあいだに、以後20年間の基本パターンが作られた。テクノロジー的発達の人間への問題の適用、人間の発達のテクノロジーの適用である」

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