トリックといかさま図鑑

さすがはナショナル・ジオグラフィック!
写真が多い。
写真を見ているだけで、当時の雰囲気が分かって楽しい。
トリックといかさまの怪しい歴史がビジュアルに伝わってくる。

心霊現象、マジック、超心理学、錯覚の心理学の順で本書は構成されている。
これはそのままトリックの歴史であり、人間の感覚の危うさと詐欺と暴露の歴史である。

霊の存在を前提とする心霊現象、霊の存在を前提としないマジック、科学的に解明しようとする超心理学、科学的に説明する錯覚の心理学という歴史的な流れである。

本書の中のヒーローは、心霊現象のペテンを暴く稀代のマジシャン・フーディーニである。
むかしから心霊現象とマジシャンの関係は深い。
時に、ペテン師とトリックの専門家の間で闘いが繰り広げられる。
超心理学の研究にもマジシャンがアドバイザーと参加していたが、現代もマジックをテーマにした心理学の研究は増えているらしい。
人間の知覚の限界と不思議を利用するマジックは、それを研究する心理学とは相性が良いのかもしれない。

見ているだけで楽しい本である。
怪しい機械の設計図やマジックショーのポスター、降霊会の写真など、これだけである種の芸術作品だと思える。
今回は図書館で借りて読んだが、部屋のスペースに余裕があれば、是非とも蔵書に加えたい。

結果としてフーディーニが乗り出したのは、心霊主義の実態を探ることに加え、彼が「健康と正気に対する脅威」と呼ぶいんちき霊媒との闘いだった。ちなみにフーディーニは、友人や家族と「死後の協定」を結び、先に死んだほうが霊界から接触を試みるという約束を交わしたうえで、その際に使う合言葉をあらかじめ決めておくという手続きを取っている。

作家のテリー・ブラチェットがいみじくも書いているように、魔法の仕組みが分かったからといって、魔法が魔法でなくなるわけではないのだ。

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