影が行く

さまざまなタイプのSFホラーが集められた日本独自の短編集である。
リチャード・マシスン、ディーン・R・クーンツ、フリッツ・ライバー、ジョン・W・キャンベル・ジュニア、フィリップ・K・ディック、デーモン・ナイト、ロジャー・ゼラズニイ、クラーク・アシュトン・スミス、ジャック・ヴァンス、アルフレッド・ベスター、ブライアン・W・オールディスといった堂々たる作家陣で、少し古めの小説が読み易い。

「消えた少女」リチャード・マシスン
突然消えた娘を巡る夫婦の驚くべき体験。
「ミステリーゾーン」の時代を想わせる手軽な疑似科学が一周回って楽しい。
この時代は、科学の神秘と脅威が身近だったんだなと感じられる。

「悪夢団」ディーン・R・クーンツ
超能力テーマの変則版と言える。
暴力的なバイカーのギャング団だが、自分の意志でないところが物悲しい。

「群体」シオドア・L・トーマス
私も大好きなアメーバーの怪物モノだと解説されているが、スケールが大きい。
ひとつの街が飲み込まれる過程が、淡々と語られる。

「歴戦の勇士」フリッツ・ライバー
ライバーの歴史戦争シリーズの外伝という位置づけらしい。
息抜きのため街に隠れていた戦士と戦争に憧れる青年の束の間の触れ合いが描かれている。

「ポールターのカナリア」キース・ロバーツ
ゴーストハンターなのだが、時代が少し古く、使うのは開発されたばかりの録音機や撮影機である。
これがいい味を出している。
現代のデジタル機器にはないスリリングな演出がなされている。
幽霊の正体もなかなかオリジナリティがある。
シリーズ化して欲しかった。

「影が行く」ジョン・W・キャンベル・ジュニア
「遊星からの物体X」の原作として有名な小説である。
最初の映画化である「遊星よりの物体X」よりもカーペンター版の「遊星からの物体X」に近い。
「遊星よりの物体X」の時代では原作通りに映像化するのは技術的に不可能だったのだろう。
結果として、大男が暴れまわる映画になっていた。
閉ざされた基地内に化け物が潜んでいるという恐ろしい状況なのに、登場人物たちの会話が妙にユーモラスなのが面白い。

「探検隊帰る」フィリップ・K・ディック
ディックらしい救いのないアイディア小説である。
主観として語られる登場人物たちが、実は、自分たちが思っている存在ではない。
それが、何度も繰り返される。

その他にも以下の作品が収録されている。
「仮面」デーモン・ナイト
「吸血機伝説」ロジャー・ゼラズニイ < 泣かせる 「ヨー・ヴァムビスの地下墓地」 < クトゥルフ神話そのもの 「5つの月が昇るとき」ジャック・ヴァンス 「ごきげん目盛り」アルフレッド・ベスター < ロボットのオーナーがロボットを貸して小金を稼ぐ 「唾の樹」ブライアン・W・オールディス

「あの哀れな男も、そういかれちゃいないのかもしれない」とマクレディがため息をつき、「あいつが野放しになったら、できるだけ早くわれわれを皆殺しにするだろう。そんな目にあうのはご免だがな。しかし、ドアのこちら側には狂人よりも悪いものがいるんだ。どっちかを野放しにしなけりゃならないとしたら、おれはここへきて、この固縛をほどくことにするよ」【影が行く】

「さて」彼は声をはりあげた。「悪いことは重なるもんだ。おれたちを助けてくれようとした者がいる。キンナーは喉にナイフを突き立てられていた。だから、歌うのをやめたんだ。たぶん。ここには怪物(モンスター)と狂人(マッドマン)と人殺し(マーダー)がいるわけだ。もっと”M”のつくやつを思いつけるか、コールドウェル? そんなのがいるにしても、遠からずお目にかかれそうだ」【影が行く】

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