スティーヴン・キング論集成

風間賢二によるキングの評論集。
よくもこれだけの数を‥と思う分量である。
キングについて、様々な切り口で楽しめる。
ダークタワーのパートは、興味が無いのでパスした。

本書は3部構成でキングとその作品について熱く語られている。

第1部は、デビュー作から初期傑作「ザ・スタンド」までの70年代。
何が傑作かは意見の分かれるところだ。
「ザ・スタンド」も面白いとは思う(主にTVシリーズ版のイメージ)が、私的には傑作という感じではない。
この時代には、懐かしい作品が並ぶ。
「キャリー」「呪われた町」「シャイニング」の初期3作から始まり、「霧」や「クリープショー」などキングファンが虜になった作品たちだ。

第2部は、80年代のモダン・ホラー全盛から21世紀のゼロ年代までである。
その中で、最初に紹介されるのが「人狼の四季」というのが渋い。
映画化はされているが、キングの中ではマイナーな作品である。
そして集大成ともいえる「IT」の後は、「ミザリー」、そしてリチャード・バックマン名義で発表した「バトルランナー」、ストラブとの合作「タリスマン」「ブラックハウス」。
TVのための書き下ろし「ゴールデン・イヤーズ」「悪魔の嵐」「ローズ・レッド」と外伝「ローズレッド エレン・リンバウアーの日記」と続く。
作品名だけ並べると、かなり偏っている。
「ファイアスターター」「デッドゾーン」はどうした!と言いたくなる。
そのあとの90年代からゼロ年代の作品は、読んでいるのだが、印象が薄い。
キングがかなり普通小説寄りになってしまったせいだろう。
「ミスター・メルセデス」や「ドクター・スリープ」などのころ頃の作品の方が楽しめる。
下品でスリリングなキングが帰って来た気がする。

第3部は、「ガンスリンガー」である。
キングの壮大なファンタジーであり、キングの世界を繋げるカギらしいが、私の趣味ではない。
頑張って3巻くらいまで読んだのだが、ついていけず挫折した。
だから、「ガンスリンガー」について解説した第3部もパスした。

それぞれのレベルはそれより上にあるレベルより少しだけ露骨で下品なんだ。最上段には心理的恐怖(テラー) がある。作家なら読者の心に惹起できる洗練された感情だ。その次に、生理的恐怖(ホラー) があり、最下層に本能的嫌悪感を刺激する恐怖がある。当然、ぼくはまず初めに心理的にこわがらせようとする。それでだめなら、生理的にゾッとさせようとする。それでもうまくいかない場合は、本能に訴えかけるほどお下劣で嫌悪感をもよおすような恐怖を描く。ぼくには自尊心なんてない。

しかしポストモダンな文化現象を通過した昨今、ロマン派が生み出したオリジナル神話に拘泥すること事態がもはやお笑い種。今や素材の順列組み合わせがあるのみ。ストーリーよりスタイル。いかにして語るかが問題なのだ。

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