彼女は一人で歩くのか?

作者が「すべてがF になる」で有名な人なので、推理作家が片手間でSFを書いたと思っていたのだが、違ったんだ。
びっくりするほどSFだった。
映画版である「ブレードランナー」より「アンドロイドは電気羊の夢を見るか?」に近い。
人工細胞により人が死ななくなった未来。
子供は生まれなくなり、その代わり人工細胞を使ったロボットであるウォーカロンが増えている。

ウォーカロンと人間の違いはほとんどなくなり、その違いを発見する研究をしているのが主人公である。
ブレードランナーか!と突っ込みたくなる。
しかし、疑似人間に自分の立場を奪われることを恐れていたディックと違い、本書の主人公は、ウォーカロンに対して好意的である。
人工的に造られたものでも、判別ができないのなら、人間と同じ扱いで良い、と思っている。
人間が死ななくなり、子供が生まれなくなった社会における人間の社会や考え方へ与える影響も深く考えられている。
争いが減り、戦争も無くなった世界だが、人類の黄昏のような雰囲気で、どこかのんびりしている。

シリーズモノらしく、この1冊だけでは何も解決していない。
世界設定は面白いが、謎にはあまり興味がないので、とりあえず続きはやめておこう。

と思ったら、聴き放題に変更になったAudibleで全10巻があったので、続きはオーディオブックで聴くことにした。
2巻である「魔法の色を知っているか?」の「色」の謎がカッコよかった。

ウォーカロンについては、過去のどこかで、その生産をやめるべきだったという意見が今でもときどき聞かれるところだ。しかし、無機質なメカニズムだった時代には、人間の労働を軽減する明瞭な役割を持っていたし、その時点ではもちろん誰も反対はしなかった。それから少しずつ部分的に有機化されていったのだから、どこかに明確な一線があったわけではない。

新たな生命に乗り移ることになるのだから、利があるのかもしれない。そうやって、環境をリニューアルしているのだろうか。太古の時代から、生き物のほとんどが、そのパラサイトによって受け継がれたというのか。古さを嫌うなんらかの理由があったのか。不思議な現象だが、ありえないことではない。

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