ビンティ調和師の旅立ち

天才的な調和師であるビンディは、父親の後を継ぐことを期待されたが、家族の反対を押し切って大学に行くことにする。
大学惑星へ向か宇宙船がメデュースという種族に襲われ、ビンティ以外は皆殺しにされてしまう。
生き残ったビンティは、大学惑星とメデュースの調停をすることになるが・・
アフリカン・ティストの冒険SFである。
科学的背景の分からない部分もあるが、少女の冒険譚として楽しめた。

ビンティの故郷である村落と宇宙船や異星人の集う大学惑星が並行して描かれる、不思議な感じの小説でもある。
ビンティの村では、泥から作ったモノを体中に塗る習慣があり、彼女もこれが剥がれると、人前で裸でいるような恥ずかしさを覚える。
この感覚がとても異質で、我々とは違う文化を持つ人間として、距離感を感じてしまう。
調和師である彼女は、数学で瞑想し、数列を呼び出すことができるのだが、この辺りがイメージしづらい。

ビンティは冒険の過程で、自分の出自を知り、他の生物の遺伝子を取り込み、彼女の意思に関わらず、様々なアイデンティティを獲得していく。
メデュースの触手や仮想空間へのアクセスなどの能力を獲得し、レベルアップしていくのが楽しい。

少女の冒険小説としては、差別や虐殺、憎しみがテーマでもあり、なかなかヘビィである。
大学惑星に向かう宇宙船で、いきなり友人が全員虐殺されるシーンが軽く描かれていると思ったが、その後にビンティはフラッシュバックに苦しみ続ける。
虐殺を実行したメデュースのオクゥが親友になるもの複雑である。

宇宙船が生物だというのもいい。
大学惑星に向かう時に使った宇宙船が妊娠し、生まれた子供の宇宙船が、最後にビンティを救うことになる。
その救い方と、その後のオチが良い。
彼女たちのこの後の生活を考えると楽しくなる。

アニメ化したら面白いかもしれない。

調和師の目には、何もかもが数式や方程式に結びついて見える。数字や方程式がつねに周囲をまわっていて、まるで飛蚊症のように目についてしかたがない。あたしはそれに慣れている。

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