三連の殺意

酷い話だった。
一番驚いたのは、視点が章によって変わるところだ。
最初は地元の警察官の視点で、彼が主人公かと思ったら、16歳で刑務所に入った男の半生と出所後の厳しい暮らしが語られる。
彼が出会った魅力的な売春婦は、後で囮捜査の警察官としてメインキャラの一人として登場する。

本シリーズの主人公である捜査官は、最初はこそ影が薄いが、女性捜査官との関係や孤児院での辛い過去、難読症などの特長から個性が見えて来る。
難読症の描写がとても興味深い。
こういう書き方をできるのは、たいしたものだと思う。

結局のところ、犯人も含めれば主人公は4人だったのかもしれない。
その誰もが業が深い。
よく出来ているとは思うが、あまりに陰湿なので次巻を読みたいとは、あまり思わない。

山の上にいるあいだは、ほとんど外に出ていなかったのかもしれない。ウィルは 難読症 のせいで、いつも自分の殻に閉じこもっていた。メニューが読めないから、行ったことのないレストランに入るのをいやがる。食料品店では、なじみのあるラベルの色か、パッケージに表示されている中身がわかる写真をもとに食品を買う。他人に手助けを求めるくらいなら飢え死にするほうを選ぶはずだ。

ウィルは珍しく正直になったときに、打ち明けてくれたことがある。図書館にいると、大好きな食べ物がいっぱいのったテーブルの前に座っているのに、それを少しも食べることができないような気持ちになる。

写真を取りはずし、わきに置いた。続いて二本の定規を書類の最上部にあて、文章の一行目だけが見えるようにする。両手の人さし指の先を使ってひとつの単語を挟み、一語一語じっくり読み取れるようにした。ウィルは文字を逆さに読んでしまいがちだ。指で単語を挟んでひとつずつ見るようにすれば、よそに視線が飛ぶのを防げる。奇妙なことに、長い単語のほうが読みやすかった。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です