20世紀SF〈2〉1950年代

そうそうたるラインナップ。
この人がこんな作品を⁉︎と思うものもあった。
全体的には分かりやすかったが、なかには理解しづらい作品もあった。
短編集とは、そういうものだ。

初めの終わり レイ・ブラッドベリ
ロケットで宇宙へ向かう息子を想う両親の姿を描いている。
それだけだけれども、情緒豊かな小説になるのがブラッドベリらしい。

ひる ロバート・シェイクリイ
宇宙から訪れた「ひる」のような宇宙生物と人間の戦いがユーモラスに描かれている。
展開が早くて、読んでいて楽しい。

父さんもどき フィリップ・K・ディック
父親に成り代わった怪しい生き物と息子と友人が撃退しようと奮闘する。
ボディ・スナッチャーのような話。

終わりの日 リチャード・マシスン
最後の日に息子は母親と和解する。
マシスンらしからぬ、ほのぼのとした話だった。

なんでも箱 ゼナ・ヘンダースン
自分にしか見えない「なんでも箱」を巡る女の子と女教師の物語。
不思議な雰囲気とやさしさの共存がヘンダーソンらしい。

隣人 クリフォード・D・シマック
村にやってきたよそ者は、村人への強力を惜しまず良き「隣人」となる。
彼のおかげで村は豊かになっていく。
不審に思い調査にやってきた記者は、村から出られなくなってしまう。

幻影の町 フレデリック・ポール
いつも通りの日常を送っていたはずが、強引なセールスによって崩れていく。
主人公は違和感を感じ調査を始めるが、町の恐るべき秘密にたどり着いてしまう。

真夜中の祭壇 C・M・コーンブルース
醜い宇宙船乗りの若者を主人公は飲み屋で歓待する。
よく分からない話だった。

証言 エリック・フランク・ラッセル
異星から避難民に対する裁判は、検事による憎しみを煽るスピーチが中心で進んだ。
しかし、その結果は予想外のものだった。
異星人の最後の選択が微笑ましい。

消失トリック アルフレッド・ベスター
タイムトラベルしてしまう奇病に対する軍事政権の独裁者の対応をユーモラスに描き、批判してる。

芸術作品 ジェームス・ブリッシュ
精神造形家の手で蘇ったシュトラウスは、未来の世界で作曲家として活躍する。
しかし、ラストは悲しい。

燃えるの脳 コードウェィナー・スミス
航海図を失った宇宙船を無事航行させるのに必要なのは、経験豊かな船長の脳だった。

たとえ世界を失っても シオドア・スタージョン
亡命して来た異星人をその母国まで移送する宇宙船での出来事。
テーマは同性愛である。

サム・ホール ポール・アンダーソン
記録の改ざんを日常とする全体主義国家で、たわむれに作った架空の犯罪者が反体制のアイコンとして独り歩きしてしまう。

前半はノスタルジックな話が多い。
巻末の50年代のSFの盛衰の解説は興味深かった。

「そうか、夢の中の、あの爆発なんだな」
「夢ではありませんわ。あなたの考えたとおりーあれは爆発なのです。本当の出来事で、原因はこの工場でした。貯蔵タンクが爆発し、それで死ななかった人たちも、直後に襲ったガスでなくなりました。2万1000人の人々が、その爆発でほとんど死んでしまったのです。あなたもその1人でした。ドーキンはそれに目をつけたのです」
「あの食人鬼!」とバークハートは言った。

「許されるんだよ、場合によってはな」検事はさえぎった。
「経過は圧倒的に君の依頼人に有利に進んだ。だから、これ以上開票続けても時間の無駄と判断されたんだ」

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