異常【アノマリー】

フランスのSFのような、純文学のような不思議な作品だった。
登場人物が多く、途中までは流れを掴むのが難しい。
結局、何を主張したいのか、よく分からなかった。

ある旅客機が空港に到着すると、乗客たちは全員隔離されることになった。
伝染病というわけではなく、実は、その旅客機は既に着陸しており、乗客たちも飛行機を降りて普通に生活している。
つまり、旅客機がタイムスリップした訳だが、同じ人物が同時に二人存在するという状況になっているのだ。
この事件が公表され、世界が混乱する中で、数ヶ月の時間差がある乗客たちは、もうひとりの自分と出会うと様々な反応をする。

この状況を説明するために、「世界はシミュレーションである」という仮説が提示され、それに宗教団体が反応し、ややこしいことになる。

解説を読む限り、著者は「重複者(ダブル)」を描きたかったようだ。
エドガー・アラン・ポーにおける「ウィリアム・ウィルソン」のようなものか。
そのテーマに興味もなかったせいか、あまり楽しめなかった。
ところどころユーモラスな描写が楽しめたが。

「要するに、ハイパーテクノロジーを駆使した文明が”偽りの文明”をシミュレーションする確率は、本物の文明が存在する可能性よりも千倍高いのです」

(大統領がTシャツにサインしたことについて)
「大丈夫ですよ、教授。水性ペンで書かせましたから、一度洗濯すれば落ちるでしょう」

「週の初めに7回、つまりそれぞれの曜日についてサイコロを振るんだ。そして奇数の目が出たらこっちのお母さん、偶数の目が出たらあっちのお母さんっていうふうに、曜日ごとに振り分けてくのさ」

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