バイオパンク

バイオテクノロジーが発達し、手軽に個人でも利用できる時代が来ている。
本書では、個人でバイオテクノロジーを追求する人々の思想や傾向を解説している。
情報と技術の民主化は共感できるが、ガレージで作る合成生物にやはり不安も感じる。

バイオテクノロジーの個人で探求する人々は、炊飯器とウィスキータンブラーで蒸留水製造装置を組み上げる。
バイオテクノロジーの原材料はスーパーで買えるという。
ミスタージーンというサービスでは、生き物の基本建材ブロックを安価に入手できる。
注文したいA.C.G.Tの配列を入力するだけで良いのだ。

彼らは、厳格な既成組織による大きなイノベーションを待つより、早く、実用レベルでちょこっと世界を広げようとしている。
城壁内の知見は権力者の利益にしかならないが、開放された知見は万人の役に立つと考えるからだ。
バイオテクノロジーでは、当局の規制よりも、一般市民の理解が必要である。
自分自身の遺伝子情報を知る権利を奪ってはいけない。

バイオパンクは大躍進というほどの成果をあげてはいない。
しかし、彼らは気にしてはいない。
彼らは自分で科学しようと決めたのだ。
だから、彼らは楽しくやっているようだ。

著者:マーカス・ウォールセン
訳者:矢野真千子
出版:NHK出版

目次
PART1 ハック/オープン
第1章  シンプルな遺伝子検査
第2章  アウトサイダーのイノベーション
第3章  バイオハッカーの源流
第4章  自分で科学する
第5章  途上国のためのバイオテクノロジー
第6章  価格を下げてハードルを下げる
第7章  遺伝子組み換え作物はだれのため?
第8章  遺伝子の所有権はだれのもの?
第9章  リスクのない医学の発展はない
第 10 章  キッチン発のイノベーション
PART2 リード/ライト
第 11 章  生命の言語を読む
第 12 章  生命の言語を書く
PART3 セイフティ/リスク
第 13 章  バイオテロ
第 14 章  アウトブレイク
PART4 ライフ/サイエンス

「私は、ものごとのしくみを理解するだけでは満足できないんです」とオールは言う。「つついてみないと気がすまないタイプなので」  
具体的にどうしたかというと、まずは道具一式を組み立てるか、ネットオークションのイーベイ(eBay)で買うかした。

1980年代以来トランスヒューマニズムと呼ばれているムーブメントの最新イベントだ。
ビショップに言わせると、トランスヒューマニズムは広義では「ヒトの機能拡張」である。
実際のところは、テクノロジーがヒトとしての基本的な問題を解決するだけでなく、いつかヒトの限界をも取り払ってくれることを願うという、強迫観念に近いものを意味する。

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