前作「面白くて眠れなくなる植物学」ほどでの驚きはなかった。
というか、途中から読んだことがある気がしてきた。
ちょいちょい文明批判が入っているが、これは余計と思った。
植物の面白いところは、動物が両性の生殖によって増えることが多いのに対し、自身をクローンで増やすことも多いことだ。
どちらかひとつではなく、状況によって選択することもあるらしい。
生物にとって繁殖って何なんだろう?と考えさせられる。
植物においては、生命の長さも幅がある。
1年で枯れる草花がある中、何千年の生息する縄文杉などもいる。
進化の歴史から見ると、短命な草花の方が後から登場してきたらしい。
環境の変化に対して個体が対応し続けるよりも、寿命を短くして世代を早く回すことで、遺伝子の変化による多様性を獲得したようだ。
人類が憧れる永遠の生命は、変化に対しては弱い存在のようだ。
植物の多くは「毒」を生成する。
「毒」は植物の脅威となる昆虫や毒物を排除するための武器だが、人間はそれに惹かれてしまう。
猛毒のベラドンナの絞り汁を点眼すると、瞳孔が広がり、目が輝いて見える。
間違えれば死に至る猛毒を利用してでも、美を追求していたようだ。
毒が体内に入ると。人間の脳は毒の苦痛を和らげるためにエンドルフィンを分泌する。
脳内麻薬と呼ばれるエンドルフィンは、人間に陶酔感を与え、その快感が忘れられなくなる。
植物が種子で増える方法を「種子繁殖」と言うのに対して、体の一部を分離して増える方法を「栄養繁殖」と言います。
毒のあるトリカブトの塊根は、「 附子」と言います。トリカブトを口にすると、神経系の機能が麻痺して無表情になります。これが、「ブス」の語源であると言われています。
ブスと言うのは、顔が醜いことではありません。表情がないことがブスなのです。