「ロックイン-統合捜査-」でファンになったジョン スコルジーの怪獣小説である。
この作家のユーモアSFはとても楽しい。
本作では、著者の怪獣愛が爆発している。
協会に入るまでのユーモラスな展開が良い。
ユーモアとテンポは、冒険モノでは必須だと思う。
パラレルワールドSFである。
我々の住む世界と重なり合ってしまった世界には怪獣が棲息していた。
世界の膜が薄くなると、怪獣がこちらにやって来てしまう。
怪獣は体内の原子炉で動いているからやっかいである。
主人公の属する組織は、怪獣の退治ではなく、保護が目的てある。
科学者ばかりの組織の中で、力仕事担当として主人公は活躍する。
とにかくセリフが良い。
メモしておきたいセリフがたくさんある。
面白かった。
これを書いてる間、作者はさぞ楽しかったろう。
トムは首を横に振った。
「ここはホンダ基地」
そこでわたしの顔つきに気づいた。
「自動車会社からとった名前じゃないからね。由来になったのはイシロウ・ホンダ。1954年の映画『ゴジラ』の監督だ。北アメリカにある基地はどこもその映画を作った人たちから名前をとっている。タナカ基地、チュウコ・キタ基地、ナカジマ基地、その他もろもろ。タナカは映画のプロデューサーの名前だ。まあ、別のタナカもかかわっていたんだけど。よくある名前なんだ」「了解、チョッパー2号。RLHプロトコルを推奨する」
「了解、ベース。RLHプロトコルを開始する」
サティは回線を切った。ちらりとカフランギに目を向ける。
「もう双眼鏡はしまっていいぞ」
「RLHプロトコルというのは?」
わたしはたずねた。
「〝 死にものぐるいで逃げろ〟という意味だ」
サティはヘリコプターを急旋回させた。「愛してるよ、怪獣オタクのみんな」アパルナは映画『ピッチ・パーフェクト』の台詞を言い換えてこぶしを突き出した。わたしはその引用に気づいたことに満足した。