空の境界

空の境界(上) (講談社文庫)帯に新伝綺と宣伝の書かれた小説である。
私の中の伝奇小説というと、半村良あたりなのだが、それとはかなりイメージが違った。
表紙や挿絵のせいか、登場人物が、この頃流行のアニメキャラに思えてしまう。

主人公は、和服にジャンバーを羽織った殺人願望のある少女と、彼女を愛する青年である。
2重人格の家系に生まれた少女は、事故のショックでひとつの人格を失った代わりに、あらゆるものの生命線を視る「魔眼」を手に入れる。
ありていに言えば、超越的な能力を持った少女が、魔術師と戦う物語である。

こう言うと、実も蓋もないが、魔術の背景はかなり凝っていて、説明に追いつくのが大変である。
ユングの集合的無意識を霊長類全体の意思とし、ガイア仮説のような地球の意思と2重構造にしている設定は面白い。
それらの全体意思に、魔術師はなかなかかなわないらしい。

魔術師達も、世界制服を狙っているのではなく、自分自身の真理を追及しているだけだ。
魔術の本質を考えると、それはとても正しい。

美しいイメージが随所に描かれている。
また、殺人というタブーと対峙して、真剣に存在の意味を問おうとしている。
しかし、半村良ほどの驚きがないのは残念である。

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