ゾンビ最強完全ガイド

ゾンビ最強完全ガイドタイトルだけ見ると、ゾンビと闘うためのガイドブックのように思える。
実は「ゾンビ」の文化的歴史を扱った本である。
それも学術書のような細かさだ。
ロメロ以降のゾンビ映画が中心でなかったのが、個人的には残念である。
しかし、大学の授業でも使いそうなこの研究書は、どこに需要があるのだろうか。

この本は、1887年ラフカディオ・ハーンのマルティーニ島での体験から始まる。
宿屋の娘に「zombiって何?」と尋ねるが、はっきりとした答えは得られなかった。

このような非西洋社会での探検に始まり、反植民地主義、半奴隷制運動においてヴドゥやゾンビは利用されていく。
アメリカのパルプ雑誌で現代的ゾンビ観が形成され、1930年代には「恐怖城」「ブロードウェイのゾンビ」などの第1次ゾンビ映画ブームが始まる。

その後も、共産主義の恐怖、朝鮮戦争における中国軍、消費社会の大衆など、さまざまな社会問題にゾンビが投影される。

個人的は、ロメロ以降のゾンビ映画についての評論が読みたかった。

さらにシーブルックは、1864年に追加されたハイチ刑法の条文を引き合いに出し、ゾンビが単なる民間信仰ではないことを主張する。その第249条の内容はこうだ。
実際に死に至らしめることなく、程度を問わず長期にわたる昏睡状態を引き起こす物質を人に投与した場合、殺人未遂の要件を満たすものとする。かかる物質を投与したあと、その者を埋葬した場合、その結果のいかんを問わず殺人とみなされるものとする。

人肉を食らうという行為は、古代ギリシャの時代から文明化された西洋とそれ以外の野蛮な世界、という線引きの参考基準となっている。なぜゾンビによる世界の終末系作品の登場人物がゾンビの群れを大量虐殺することが許されるのかといえば、ゾンビは現代における人間未満の蛮族として扱われているからだ。

ゾンビは社会学者が「リスク社会」と呼ぶ、「非常事態が通常の状態になる恐れのある」現代で、人間社会と地球を脅かすいくつもの惨事を想定する際の寓意の代表になりつつある。

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