舟を編む

舟を編む (光文社文庫)辞書を作る話しである。
普段何気なく使う辞書を作るのが、いかに大変なことであるかがよく分かる。
「まほろ駅前」シリーズと「神去」シリーズの作者による作品だ。
全く異なる雰囲気と業界を書き分ける手腕はたいしたものだ。

ある出版社が辞典を出版するまでの苦闘が、関係者の私生活を交えて語られる。
前半は、営業部から引き抜かれた辞書向きの変人馬締を中心に、彼の不器用な恋と辞書作りが描かれている。
後半は、数年後に部署のリーダーに成長した馬締が、転属して来た新人や外注の印刷屋などと伴に、出版に向けて苦闘する物語である。

本書の中では、この辞書を作るのに、企画から13年も経っている。
5年先も判らない現代のビジネス環境において、恐ろしく気の長い話しである。
それが「文化」というものなのかもしれない。
しかし、その間にも新しい言葉が生まれ、言葉に意味も変わるので、日々言葉の収集を続けなければならない。
無事出版しても、改訂が待っている。

辞書専用の紙を印刷屋が開発するらしい。
本の厚みを抑えるために紙は薄くなければならないが、裏写りしてはいけない。
さらにめくり易いように「ぬめり感」が必要なようだ。
一大プロジェクトである。

不器用で変人な馬締も良いが、同僚で先輩の西岡もいい。
何でも器用にこなすお調子者だが、何も夢中になれず、辞書作りに邁進する馬締たちに軽い嫉妬を覚える。
それでも一本気な馬締を影で支えてしまう。

巻末に主人公が彼女に送った恋文の全文が掲載されている。
漢文が多数引用されている手紙が、恋文だとはまず判らないと思う。
雰囲気で察したとしても、内容の解読は一般人には難しすぎる。

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