スティーブ・ジョブズ

ちくま評伝シリーズ〈ポルトレ〉スティーブ・ジョブズスティーブ・ジョブズと言えば、同時代に生きた数少ない偉人である。
彼の打ち出した思想に基づく製品にはかなり楽しませてもらった。
コンピュータ企業の社長というよりポップスターというイメージがある。
アップル自体も、コンピュータメーカーではなくナイキなどに近いクールなブランドである。
いまさら伝記を読むこともないと思っていたが、読んでみたら発見があった。

ジョブズは養子であるにも関わらず、子供の頃からいたずら坊主で、やり放題だったようだ。
裕福ではない両親に無理を言って好きな大学に入ったのに、すぐに中退してしまう。
その後も、好きな授業だけ受講するもぐりの学生になった。
結果的には、その時に学んだことが後に活きてくる。

コンピュータの魔術師ウォズとの出会いは有名だが、この伝記で興味深かったのは、導師との出会いだった。
導師を求めてインドを放浪したジョブズは、米国に戻ってから曹洞宗の僧侶である知野弘文を導師とする。
その導師に対し「悟りを得た」と報告し、「証拠を見せろ」と言われるとPCのマザーボードを見せたと言う。
真偽のほどは定かではないようだが、物語のような美しい光景である。

彼の後半生については、よく知られている。
Macをリリースしたもののアップルを追われ、Next社を立ち上げた後にアップルに返り咲く。
その後の、iMac、iPod、iPhone、iPadの成功は目覚ましいものだった。

彼の成功は、人の欲しいものを見抜く力だったように思える。
人は何が欲しいか、それを見るまでは分からない。
だから彼は市場調査を信じなかったようだ。
発明を基盤とするビジネスには、強烈なビジョンが必要なのだろう。

市場調査はしないのかという質問に、ジョブズはこう答えた。
「「顧客の求めるものを提供しろ」と、言う人がいる。だけど、それは僕のやり方じゃない。顧客が自分で気づく前に、彼らがほしいものをつかむのが僕らの仕事なんだ。ヘンリー・フォードは確かこう言っていた。「もし顧客に何がほしいかなんて聞いていたら、きっと彼らはこう答えただろう。もっと速い馬!」ってね。人は自分はほんとうは何がほしいのかわからないんだ、君が実際に見せてあげるまでは。それが僕が市場調査を信用しない理由さ。我々の任務は、歴史の1ページにまだ書かれていないことを読み取ることなんだ」

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