ログ・ホライズン10

ログ・ホライズン10 ノウアスフィアの開墾前回は中国サーバだったので新しいキャラクターばかりだったが、今回はアキバに戻っていつものメンバーが活躍する。
同じ話をアニメでも既に見ている。
しかし、小説の方が圧倒的に面白い。
アニメ版がおかしな構成に変更されていたせいもあるが、ログ・ホライズンにおいては内面描写が重要なので、実は映像化には向いていなかったのかもしれない。

この世界に冒険者と大地人以外の存在があると知ったシロエたちは、彼らの住むという月面とのコンタクトを検討する。
そして、現実世界への帰還の可能性も見えてきた。
大地人間の戦争が予想される状況で、彼らを見捨てて現実世界へ帰還すべきか、シロエの悩みが今回の中心となる。

アイザックやカラシン、リーザなどのログ・ホライズン以外のメンバーの活躍も楽しい。
それぞれが悩みと逞しさを持った、いいキャラクターに育っている。
また、前巻では元気なお姉さんという印象でしかなかったカナミの凄さも見えてきた。
最後は、彼女に持って行かれた感がある。

この世界はなぜ存在するのか、なぜ彼らは送り込まれたか、ちゃんと解決する気がありそうなので、今後が楽しみだ。

少ない人口と過剰な能力が、この世界を狭くしている。例えば自分が不幸になった時、それがすぐさまほかの誰かの責任だと思い込んでしまうほどに。だから持つ者と持たざる者の間に亀裂が生まれるし、帰還を最上位の課題だと考える人々とそうではない層の間に反目が生まれる。互いに互いが原因だと考える。そう考えざる得ないほどに、互いの間に距離が近く、この世界には互い以外が存在しない。
世界がゼロサムゲームの呪いにとらわれたように閉鎖されていて、逃げ場がない。この世界ではだれもが被害者であり当事者なのだ。

「カスタマーとか安全管理とか、利益を生まない部門に予算は微笑まないってのが民間企業の常識なんですけどね。あいにく僕らは勤め人じゃないので。そんなわけでセルジアット公。ーそちらの在庫、<円卓>に売ってくれませんか?」
眉を撥ね上げて「なにが必要かな?」と漏らすセルジアットにカラシンは精いっぱいのすまし顔で答えた。
「とりあえず、ぐうたら姫さまとか」

どちらかを選ばないで、両方を選んで、そしてさらにその未来を望む。強欲であることを必死に自分に言い聞かせていたシロエはばかばかしい気持ちになった。シロエが望んだ「一番大きな野望」ですらカナミには小さかったらしい、でも、そんな夢の形があるのならシロエが手に入れたってかまわないだろう。

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