怪獣使いと少年

怪獣使いと少年―ウルトラマンの作家たち 金城哲夫・佐々木守・上原正三・市川森一初期のウルトラ・シリーズの脚本家3人についての評論である。
子供のころに楽しく見ていたウルトラ・シリーズに、このようなダークな背景があったとは知らなかった。
子どもが理解するには難しいテーマであり、違う世代には実感出来ない時代背景である。
しかし、完全に過去の問題になってしまったわけでもない。

この本では以下の4人の脚本家について解説されている。
・金城哲夫
・佐々木守
・上原正三
・市川森一

それぞれ、ウルトラマン、ウルトラセブン、帰ってきたウルトラマン、ウルトラマンAの脚本家である。
子供の頃に観た記憶では、ジャミラなどの悲しい怪獣は居たけれど、基本的には怪獣をウルトラマンが倒す勧善懲悪の特撮だった。
しかし、実際には、敗戦や沖縄の差別などを背景にした、社会的な問題や作家の個人的な主張(や怨念)を色濃く反映していたようだ。

映像作品の主張としては面白いが、敗戦や沖縄人の差別などは時代が違うので実感として分からない。
しかし、沖縄の基地問題などは、この時代の感覚が分からないと、理解できないのかもしれない。

「破壊者ウルトラマン(大江健三郎)」が怪獣映画に見出す現実の図式化は、次に集約される。
・怪獣=公害、核の被害者 または あらゆるマイノリティ(沖縄人、アイヌなど)
・ウルトラマン=科学の神 または アメリカ帝国主義
・怪獣の破壊=戦災(東京大空襲、原爆、沖縄戦など)

「現実に考えなければならない問題を怪獣や犯罪に託して訴える、というのが当時のテレビドラマのテーマだったんです。でもそういうのは大嫌い。僕は自分が社会派的に、弱者の味方だなんて思ったことは1回もないんです」(市川談)

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