我らが隣人の犯罪

我らが隣人の犯罪 (文春文庫)宮部みゆきの初期短編集である。
ハズレのない珍しい短編集だ。
どれを読んでも面白い。
この頃のシンプルな宮部みゆきの方が私の好みである。
子どもたちが元気で、だからと言って無垢ではない個人で、心暖まるオチのつく話が多い。

「我らが隣人の犯罪」
隣の家の犬があまりにうるさいので、2人の子供とその叔父さんがある計画を立てる。
叔父さんのくせに、子供を犯罪に巻き込むなよ、と読んでいて心配になる。
まあ、独身の叔父さんなんて、いい加減なものだとは思うが。
子供でも普通に欲望があるというラストには、不思議と爽快感がある。

「この子誰の子」
両親不在の家に、赤ん坊を連れた女性が上がり込み、父親の隠し子だと言い張る。
とても短い話で、登場人物も主人公の少年と怪しい女性だけである。
少年の一人称で語られる話には、秘密がほのめかされているが、なかなか明らかにされない。
最後の3行は泣かせる。

「サボテンの花」
植物の超能力を研究したいと主張する子供たちと、それを許さない担任の間に挟まれて、心優しい教頭先生が奮闘する。
よくあるお涙頂戴ものにならないのは、子供たちの突飛な行動とその理由によるものだろう。
サボテンの研究にはそんな理由があったのか、と唸らせるアクロバティックなミステリーだ。

「祝・殺人」
結婚式のピアノ演奏者からの告発のみで構成されたミステリーである。
限定された情報で、どんどん犯人の罪が確定していく。
ワンポイント・アイディアのミステリーだが、料理の仕方がうまい。

「気分は自殺志願者」
珍しい奇病に冒された男は、ミステリー作家に完全な自殺の方法を教えてもらおうとするが・・・
自殺志願の男とミステリー作家の会話が楽しい作品である。

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