明日、機械がヒトになる

明日、機械がヒトになる ルポ最新科学 (講談社現代新書)海猫沢めろんが、人間と機械の境界線を探るため、最先端を行く科学者達にインタビューしたインタビュー集である。
ロボットやAIについて考えているうちに、「人間には心などないのではないか」という疑問に突き当たったのが興味深い。

本書では、SR、3Dプリンター、アンドロイド、AI、ヒューマンビッグデータ、BMI、幸福学の分野で、最先端の研究を行っている科学者にインタビューをしている。

【SR】藤井直敬
SRとは代替現実のことである。
ヘッドマウントディスプレイなどを使い、現実の上にデータや画像をオーバレイで表示し、現実に情報を追加する技術だ。
自分の身体を別の視点から眺める「幽体離脱」を簡単に体験できる。
藤井が目指すのは、人間の認知レベルの引き上げである。
他者の視点を体験することで、人間の認知のレベルが変わる可能性がある。

【3Dプリンタ】田中浩也
低価格化が進み、家庭での購入も可能になった3Dプリンタだが、3Dプリンタは同じモノを印刷するのではなく、少しづつ改良したモノを印刷することが多いらしい。
その意味では、生物に近い。
3Dプリンタでは、変化し続けるデータこそが本体で、実体化すると変化しない印刷されたモノは抜け殻だ、とする考え方は面白い。
どうやら3Dプリンタの世界では、デジタル陶芸が熱いらしい。

【アンドロイド】石黒浩
人間にとって最高のインターフェイスは人間である、という考えで石黒浩は、人間型ロボット(アンドロイド)の研究を行っている。
人間はロボットに心を開く傾向があり、将来的にはオレオレ詐欺に使われる危険もあるという。

【AI】松尾豊
海猫沢めろんは、ディープラーニングの体験として、コンピュータがブロック崩しを学習する過程を見て来たようだ。
人間に教えられなくても、自分で特徴を見つけ出し、学習するAIは、恐ろしい勢いで進化している。
しかし、それは将来予測の精度を上げているので、「意識を持つ」とは別の方向のようだ。

【ヒューマンビッグデータ】矢野和夫
矢野和夫は、人間の活動量からの予測を研究している。
人間が1日のうちで活動できる量は決っているらしい。
だから、1日の10ページ書く作家は、頑張っても10ページからそれほど多く書けない。
彼は、次の課題として、幸福を計測する方法を研究している。

【BMI】西村幸男
西村幸男の研究は、一般的なBMIのイメージとは異なり、脳と脊髄の失われた接続を再生する「人工神経接続」という分野である。
彼は、簡単に機械に任せるのではなく、人間の本来持っているものを有効に使おうと考えている。
秘められた脳の力を引き出すのが彼の目標だ。

【幸福学】前野隆司
ロボットは人を幸せにするもの、と考えてロボットの研究をしていた前野隆司は、技術が進歩して、物質的に豊かになっても人間の幸福度が高くなっていないことに気づき、幸福学を研究することにした。
彼の提唱する「幸福の4つの因子」は以下の通り。

(1)「やってみよう」因子(自己実現と成長の因子)
なんでもいいから得意なことをやってみる。みんな一芸に秀でたオタクになるべき。自分らしい目標を持つべき。
(2)「ありがとう!」因子(つながりと感謝の因子)
人を喜ばせたり、感謝の心を持つこと。様々な種類の友人がいること。
(3)「なんとかなる!」因子(前向きと楽観の因子)
楽観的であれ。失敗や不安をあまり引きずるな。
(4)「あなたらしく!」因子(独立とマイペースの因子)
人と自分を比べるべきではない。人の目を気にせず自分らしく。

それぞれのインタビューの気になる点をピックアップしたら、とりとめのないまとめになってしまった。

藤井 自分の身体は元の場所にあるけど、視点からは自分が見えるから、分離しちゃうんですよ。カメラの位置を何ヶ所かに動かしていくと、自分ではない別のところに自分の視点が持ったいかれたまんまになっちゅって、それをずっと繰り返していると、部屋に自分が充満しているような気になってしまう。神っぽい視点になってしまうんです。

石黒 このテレノイドを通じた会話療法などをデンマークで行っているんですが、高齢者や精神障害者は異様にテレノイドが好きになってしまうんですよね。
で、なにが起こるかというと、ありとあらゆる秘密をしゃべっちゃうんです。たとえば、銀行口座とか、暗証番号とか、全部言っちゃうんです。

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