千里眼シンガポール・フライヤー

千里眼シンガポール・フライヤー 上 (角川文庫 ま 26-109)前巻での事件の影響で、今回の美由紀はかなり弱気である。
自らが精神病患者となってしまい、症状に苦しんでいる。
万能のスーパーウーマンであった美由紀に、初めて本格的な弱点が出来たので、むしろ人間味が増し、感情移入し易くなった。

今回は人類を心理操作で操るメフィストに代わり、機械主義を信奉する新しい敵が登場する。
舞台設定としては、無人戦闘機、鳥インフルエンザ、F1、シンガポールの大観覧車と、相変わらず派手である。

レースと陰謀というと、どうしても「ルパン3世」の第1話を思い出してしまう。
峰不二子ほど可愛気のない美由紀は、当然F1の運転でも抜群の能力でレーサーデビューしてしまう。

彼女が苦しむ精神病が「不思議の国のアリス症候群」というのが面白い。
ファンタジーの中のアリスのように、自分の身体が大きくなったり、小さくなったり感じる病気らしい。
そんな病気が存在するのかと思うが、松岡圭祐が簡単に足の付くネタで仕掛けて来るはずはないので、きっと実在するのだろう。
最後のダークスター・アタックで、この症状を逆手に取るのが面白い。

マンガのような読み易い小説を目指している、と作者が言っていた。
そのせいで、千里眼シリーズは、かなり軽い読み物になって来ていたのが、少し不満だった。
しかし、この巻は、小説として楽しめるレベルに戻ってきた気がする。
嬉しい限りである。

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