インドの衝撃

インドの衝撃 (文春文庫)中国の次には、必ず世界を牽引するであろうインドの現状について、NHKスペシャルのスタッフが、教育、消費、政治の分野で取材したのが本書である。
日本の明治維新や終戦後のような勢いがそこにはあった。

第1部「わき上がる頭脳パワー」では、インドの頭脳エリートが世界で活躍している姿が描かれている。
それを支えているのは、猛烈な勉強である。
勉強することが、階級と関係なく豊かになる手段なのだ。
世界中に散っていたインド人たちが、今は母国に戻る傾向があるようだ。
国内の若者たちも、自分たちの故郷を良くするために頑張っている。

第2部「11億の消費パワー」は、インドの国内消費の現実である。
日本の10倍の人口があるインドは、国内需要だけで巨大なマーケットである。
貧しかった人々が、中流に上がりつつあるので、その消費パワーは凄まじい。
それでもまだ、ほとんどの人は、貧しいままである。
その貧しい人々さえもターゲットとして考えているインドの新興企業は、恐ろしくしたたかである。

第3部「台頭する政治大国」では、インドの外交、特にアメリカに核保有を認めさせた背景が語られている。
そこには、長年植民地だったインドの、他国からの強制に対する嫌悪と、大国としての自負がある。

全体を通して感じたのは、日本の明治維新や終戦後のような勢いである。
貧しい国が豊かになる機会を得て、がむしゃらに頑張っているように思える。

日本と違うのは、国内だけでも十分マーケットが大きいことである。
貿易立国とならずとも、自国の需要だけで国を回すことが出来る可能性がある。

国民が向上心を持つためには、「貧しさ」は強力なエンジンである。
しかし、グローバル化の現代では、ある程度の水準までは早期に到達する傾向がある。
その時、インドはどうなるのだろう?

11億のインド人のうち、半分でも先進国の水準に達した時、地球の資源やエネルギーは保つのだろうか?

がむしゃらな努力が1周してしまった国に住む者として、色々と不安になる。

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