生物学的文明論

生物学的文明論 (新潮新書)「ゾウの時間 ネズミの時間」で有名な生物学者が、現代文明を生物学の視点で分析する。
「生物は円柱形だが人工物は四角い」など、独特の視点が面白い。

話はサンゴ礁から始まる。
サンゴ礁のある海は、透明度の高い美しい海である。
しかし、透明度が高いと言うことは、プランクトンが少なく、本来生物が生活しにくい環境である。
サンゴと褐虫藻の見事な共生が、サンゴ礁を海のオアシスにしている。
サンゴは、褐虫藻が光合成し易いようにサンゴ礁を形成し、褐虫藻はサンゴに食料を与えている。
そのおこぼれて、サンゴ礁には多様な生物が棲息している。

違う共生の形として、掃除魚が面白い。
魚の身体についた寄生虫を掃除魚に掃除してもらうために、魚達が並んで順番待ちをするというのだから微笑ましい。
口の中に入って掃除しても、掃除魚が食べられることはない。
掃除魚は、青い地に黒いラインが入った姿をしているが、これは世界共通のサインである。

生物多様性の問題は難しい。
生物に多様性があることは、人間にとってメリットのあることだと思うのだが、それを人間のメリットだけで論じるのは貧しい、という著者の主張も理解できる。

水の豊かな日本に住んでいると、水問題はどこか他人事のような気がしてしまう。
しかし、輸入している食料は、構成物質としてはほとんどが水で、大量の水を輸入していると言われると、納得せざる得ない。
その食料を生産するにも、膨大な水が使われている。
ご飯一膳分で風呂2.5杯分もの水が使われている事実は、驚きである。

「生物は円柱形である」という考え方がある。
人間も、円柱形の胴体に、円柱形の手足が付いている。
海から生まれ、海を抱えて陸に上がった生物は、内部からと外部からの圧力に強い円柱形に進化したようだ。
それに対して、人工物は四角い。
四角い文明の中では、円柱形の人間は浮いた存在になってしまう、という著者の見方は面白い。

そして、生物はやわらかく、人工物は硬い。
人工物は、壊れないように、錆びないように、硬く、水を抜いて作られている。
それに対して、生物は、水を含むのでやわらかく、壊れても再生し、死体は他の生物が食べてリサイクルするようになっている。
子孫を作ることまで考えると、本当に長持ちなのは生物の方である。

生物の基礎代謝率は、種類に関係なく体重の3/4乗に比例する。
しかし、恒温動物と変温動物では15倍違う、など生物の秘密に迫れるのではないか、と思わせる知見が豊富な、ワクワクする本である。

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