監視社会の恐怖から、国家のあり方についてひとつの考え方を提示している。
陰謀論よりもよっぽど納得できる現代的な感覚である。
テーマは重いが、見事にエンターテイメントしている。
伊坂幸太郎恐るべし。
冒頭、いきなり主人公が拷問される危機にある。
それも浮気を疑った妻の差し向けたプロにである。
何が起こっているのか、続きが気になってしまう。
主人公はブラックな会社のシステムエンジニア。
彼が失踪した先輩から引き続いだシステムは、あるキーワードの組み合わせを検索すると、検索した人間に不幸が訪れる。
現代版の「リング」である。
もちろんホラーではないので、現実的な理由がある。
しかし、ホラーよりもたちが悪いかもしれない。
陰謀はあるのだが、主犯がいないのだ。
21世紀の住む我々には、感覚的に納得出来る背景がそこにはある。
思想的な問題は抜きにしても、エンターテイメントとしてよくできている。
出てくるのは曲者ばかりである。
ユーモラスで、時には残酷で魅力的な登場人物が多い。
特に、浮気した疑いのある夫を拷問する恐ろしい妻。
結局、彼女は何者だったのだろう。
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