極北ラプソディ

極北ラプソディ (朝日文庫)「極北クレイマー」の続編である。
北海道にある破産した地方自治体の病院に派遣された医師今中が、孤軍奮闘して病院立て直しのために戦うのが「極北クレイマー」だった。
颯爽と病院立て直しのプロの世良が現れるところで前作は終わっていた。
その後どうなったか、が本作で語られる。
3人の主人公をキッチリ描くのは、さすが海堂尊である。

赤字の病院を建て直すために世良が取った方策は、救急医療は全てとなりの市の救急医療センターに任せ、薬もなるべく出さずに患者から未収金を回収することだった。
目の前の患者を救いたい今中には、納得のいかない日々だった。
患者の死亡により世良がマスコミからバッシングされる中、今中は隣の市の救急医療センターへの出向を命じられる。

一人目の主人公は当然今中である。
不器用で、理想と現実の間に挟まれて悩む。
そして、周りの人に助けられて、成長していく。
途中までは、完全に今中が主人公として描かれている。

二人目の主人公は、速水である。
「ゼネラル・ルージュの凱旋」の将軍は、こんなところに居たのだ!
ドクターヘリを使い、患者を救うためにはあらゆるルールを破る。
その破天荒さは相変わらずである。
センター長のタヌキおやじとの掛け合いが微笑ましい。
そしてスキー場での救出劇の絵的な美しさは素晴らしい。

三人目の主人公は世良である。
今中から見ると、計算高いプロフェッショナルである彼も、悩める一人の人間だった。
そりゃ反則だろ、と思わせる微笑ましいハッピーエンドが待っている。

それほど長くもない小説の中で、主人公を三人切り替え、見事に描き切る海堂尊のストーリーテーリングは凄いと思う。

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