スカウト52

スカウト52 (ハヤカワ文庫NV)無人島でキャンプをしていた少年たちを遺伝子改造された寄生虫が襲う!
ネタはこれだけ、ド直球のSFホラーである。
これだけでのネタで580ページを書き上げ、そして読ませる。
ただし、かなりグロい描写が多いので万人向けとは言えない。

ちなみに寄生虫というのは、生物の内蔵に巣食う回虫の類いである。
遺伝子改造で凶暴で強力になった回虫が、人間を内部から食い荒らす。
その描写はかなり生々しいので、食事中に読むのはおススメ出来ない。
私も失敗した。

オタク、ガキ大将、暴れん坊、サイコパスなどボーイスカウトの少年たちは個性豊かである。
まだ大人になっていない彼らが、極限状況に追い詰められることにより、恐怖や欲望をむき出しにしていく。
「蝿の王」を彷彿させる展開である。
ただ、ほのかな友情に泣かされる場面もある。

誰が感染されているか疑心暗鬼になる状況は「遊星からの物体X」のようだが、自分が感染しているか疑い、寄生虫に脳をコントロールされて人格が変わるあたりは「マタンゴ」の雰囲気がある。

寄生虫に寄生されると猛烈にお腹が減り、食べ物でないものも食べるようになってしまう。
人間なので、そんな自分の行動を正当化する心理が働く。
その心理描写が痛々しい。
この小説を読んでから、急にお腹が減ると、ちょっと寄生虫の存在を疑いたくなるようになった。

自分の中の寄生虫を探し出すために、自分の身体をナイフで解体しようとする少年や、瀕死の人間の腹から出てくる巨大な白い回虫の描写など、トラウマになりそうな要素満載の佳作である。

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