ジェームズ・ボンドがダニエル・クレイグになってから、ハリウッドのアクション映画とはティストの異なる渋いシリーズだったが、今回はやってしまった感が強い。
ご都合主義のアクションが多く、これはダニエル・クレイグの真面目な顔とは相性が悪い。
有名な悪役スペクターが登場したが、インパクトが薄かった。
前作でMが死んでしまい、イギリスの情報部は新しい体制への変革が行われ、ボンドの属する00部門も閉鎖の危機になる。
そんな中、亡くなったMの遺言に従い、ボンドは秘密裏に捜査を進める。
彼が探り当てたのは、世界の悪を影で操る組織の存在だった。
そのトップは、ボンドがよく知る人物だった。
ボンドは情報提供者の娘を守りつつ、組織の壊滅に動き出す。
オープニングには笑ってしまった。
裸の美女やボンドにタコが絡みついているのだ。
いくら敵の組織のアイコンがタコだからと言って、笑わせようとしているのか、と思ってしまう。
メキシコシティで敵を暗殺しようとしたボンドは、敵の居る向かいビルの崩壊に巻き込まれ逃げ惑う。
ここでボンドに向かって建物が倒れてくる必要はないし、逃げ方も運が良すぎる。
その後のヘリでの格闘シーンは手に汗握る。
ボンドがどうなるかより、群衆で溢れた広場にヘリが落ちたら大惨事になる、という心配である。
ゲレンデで、翼の取れた飛行機に乗って敵の車を追いかけるのも無理がある。
これが、むかしのコミカルなボンドならマンガのように楽しめるが、ダニエル・クレイグだとバランスが悪い。
有名なスペクターも思ったより小物だった。
何より、彼がボンドに行う拷問の意味が分からない。
普通に殺したほうが良かったと思う。
逃亡中の列車の中でもきっちりドレスアップするあたりは、さすがイギリス紳士である。
この映画のボンドは女性に優しく、エロシーンも少ない。
情報を得るために葬式後の未亡人とベッドインするが、描写はおとなしい。
子供が観ても問題ない映画となっている。
何より驚いたのは、ボンドが仕事より女性を選んだことである。
きっと、次回作の冒頭で殺されてしまうのだろうけど。