自分では気づかない心の盲点

自分では気づかない、ココロの盲点 完全版 本当の自分を知る練習問題80 (ブルーバックス)「進化しすぎた脳」の著者による思考の錯覚を集めた本である。
「認知バイアス」をクイズ形式で80問まとめている。
シンプルにまとまっていて、読み易い。
正解の意外性が面白いだけでなく、その解説が興味深い。

私は人間の認知のズレに興味があるので、そればかりを集めたこの本は私の趣味のど真ん中である。
行動経済学で有名な理論も多いが、聞いたことのないバイアスもある。
すべての現象、理論に名前が付いているのが、なんとなく嬉しい。

気に入ったものを幾つか抜粋する。本文を若干編集して短くしてある。

ケース3 麗しきあの方
「どちらが好みのタイプですか。好きなほうの写真をさしあげますよ」と言われ、あなたは好みのほうを指しました。
実は相手は手品師で、こっそり、あなたが選んだほうとは逆の、つまり好みでないほうの写真を手渡します。
さて、あなたは手元にきた写真を眺めて、「好みでなかった異性の写真が手渡された」ことに気づくでしょうか。

①気づく
②気づかない

答え ②気づかない
なんと8割以上の人が気づきません。この脳のクセは「選択盲」と呼びます。
実は、選択盲の実験は、この先が奥深いのです。「なぜその人がタイプなのですか?」と理由を尋ねると、しばしば、手元にある(つまり好みでなかったほうの)写真を眺めながら、「丸顔で優しそうだから」「目尻に知性を感じるから」などと、そこに写った人(つまり好みでなかったほう)の特徴を挙げながら、好きな理由として答えます。
脳は理由を問われると作話します。しかも、でっちあげたその理由を、本人は心底から「本当の理由」だと勘違いしています。
(中略)真の理由は自分でアクセスできない無意識の世界に格納されています。自分の与り知らないところに理由があるのに、恥じらいもなく堂々と虚構を語ります。ヒトは自身の虚言癖に気づいていない気の毒な存在。愛嬌たっぷりです。

ケース6 我が家の楽園
ネズミに2種類の餌を同時に与えてみましょう。1つは皿に入った餌、もう1つはレバーを押して出る餌。どちらの餌も同じです。
さて、どちらの餌を選ぶネズミが多いでしょうか。

①皿に入った餌
②レバーを押して出る餌

答え ②レバーを押して出る餌
不思議なことに、皿から餌を自由に食べられるにもかかわらず、わざわざレバーを押します。苦労せずに得られる皿の餌よりも、労働して得られる餌のほうが、価値が高いのでしょう。
実は、これはイヌやサルはもちろん、トリやサカナに至るまで、動物界にほぼ共通してみられる現象で、「コントラフリーローディング効果」と呼ばれます。
(中略)ちなみに、これまで調べれれた中で、コントラフリーローディング効果が生じない唯一の動物が飼ネコです。ネコは徹底的な現実主義者で、レバー押しに精を出すことはありません。

ケース80 お気に召すまま
両手にレバーを握ってもらいます。レバーにはボタンがついています。
好きなときに、左右好きなほうのボタンを、自分の意志で、自由に押してください。
この実験中、あたなの脳活動を測定します。
さて、手を動かす準備をする脳活動のタイミングは次のどちらだったでしょうか。

①「押したい」と思ってから、脳が押す準備を始める
②脳が押す準備を開始してから、「押したい」と感じる

答え ②脳が押す準備を開始してから、「押したい」と感じる
驚くなかれ、「押そう」と決める前に、脳は「押す準備」を始めています。無意識の脳回路が押す準備を整えたところで、ようやく「押したい」という感情が湧き上がります。
自由な意志は「後づけ」の感情です。脳を測定すれば、みなさんがボタンを押したくなる少なくとも7秒も前には、左右どちらの手で押そうと意図するかを、当人よりも先に知ることができます。
意識に現われる「自由な心」はよくできた幻覚にすぎないーこれはほぼ間違いないでしょう。「意志」は、あくまでも脳の活動の結果であって、原因ではありません。

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