スーパーヒューマン誕生!

スーパーヒューマン誕生! 人間はSFを超える (NHK出版新書)科学の進歩により、人間の機能は拡張しつつある。
義足のランナーは、普通の足のランナーよりも早く走れるようになってきている。
また、スマートフォンやウェラブルコンピュータは、人間の機能の拡張とも言える。
本書では、科学技術が現在、人間の機能をどのように拡張しているか、またその先はどうなるのか考察している。
物理的機能だけでなく、認識面に踏み込んでいるのも面白い。

本書は、まず義足の話から始まる。
義足は人間の失われた機能を補う「補綴」である。
しかし、義足のランナーが健常者を超えることで、機能の「拡張」となっている。

次に、人間の「身体」はどこまでなのか、を考察する。
人間が自分の身体と認識する方法は意外と脆弱である。
「ラバー・ハンド・イリュージョン」という実験では、人間はゴムの手を自分の手だと認識してしまう。
人間は、五感を使って現実を認識しているが、五感をテクノロジーで拡張することで、新しい現実を手に入れる可能性が提示されている。
遠隔地のロボットを操作すると、ロボットの腕が、自分の腕のように感じられるようになるという。

ロボットを操作することで、もうひとつの自分を得る(認識)することが出来る。
これは分かるのだが、他の人の身体と交換する、ひとつの身体を複数人で共有する、となると実感として分からない。

テクノロジーによる人間の身体機能の拡張から始まり、人間における身体の認識とその先にある身体のあり方まで踏み込んだ、面白い本だった。

自分の感情や情動をコントロールすることは非常に難しい。
自分がどういう表情をしているかを知る方法がないため、制御を可能とするためのフィードバック・ループが働かないのだ。
もし自分がどのような表情をしているのか知ることができ、表情も変えようと思うのならば、コントローラブルな身体領域が拡大したといえるだろう。

(遠隔ロボットを操縦していると)どこかで見たことがあるような背中が目に入る。しばらくは気づかないが、その背中は自分の背中なのだと、あとから驚くことになる。
この衝撃的な体験をするまでは、私の心は自らの身体の中に存在すると信じて疑っていなかった。
その確信が揺らいだのだ。
意識が肉体から離れる「幽体離脱」と呼ばれる現象のように、遠隔ロボットがある位置に私の心が移動したように感じた。

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