物欲なき世界

物欲なき世界「欲しいモノがなくなった」というのが、先進国の人々の共通の認識ではないだろうか。
それはそれで、満たされた社会と見ることも出来るが、消費を前提とした資本主義には大きな問題である。
20世紀を動かしていた人々の「物欲」が失われた後、どのような世界が到来するかについて書かれた本である。

本書はファンション業界の話から始まる。
社会学系の本のつもりで買ったが、間違ってしまったかと心配になってきた。
心配は杞憂で、途中から社会的トレンドの分析となった。
著者が出版出身なので、このような導入部になったのだろう。

現代のマーケティングに関する本とポジティブ心理学の本での共通点は、現代においてお金とお金で買えるモノは魅力を失っている、ということだ。
20世紀に信じられていたように、高価なモノを購入すれば幸せになれる、という幻想は打ち砕かれつつある。
そこで求められるのは、自分らしさや「物語」だと言う。
しかし、それで資本主義社会が維持できるのか、という疑問が起こる。
本書では、資本主義の拡大生産は終わりを告げ、成長のない定常型社会が一般的になる、としている。
不要なモノは所有せず、生産しない。
必要なモノは、必要な時だけ利用し、シェアする。
そのような社会を想像するのは難しいが、フロンティアを失った資本主義が成長をするためには、格差を生み出すしかないのであれば、資本主義の終わりも近いのだろう。

つまり日本の経済でモノの経済は4分の1にすぎず、モノ以外の経済が4分の3を占め、さらに拡大傾向になることがわかる。
端的に言うと、お金でモノ以外のものを買うことが現在の経済の中心と言えるだろう。

スキデルスキーによれば、自由市場資本主義のイデオロギーは、ある程度のお金があれば「もう十分」だとする考え方に一貫して敵対的だという。そのような考え方には覇気がなく、現状に安住し、よりよい生活をめざす自然の願望に反すると。

しかし低成長下、さらには定常型社会に向かう中で、シェアやレンタルが当たり前の「物欲なき世界」に突入し、買い物リストを埋めることに積極的な意味を持たなくなると、幸福のあり方が変わらざる得ない。そこにおいて幸福は、より個人的で、かつ普遍的な価値を共有出来るものに向かう。つまり個人の思想・心情が強く含まれているが、他者とも価値観を共有出来る「いい物語をもった人生」が最大の幸福になるだろう。

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