グラン・ヴァカンス

飛浩隆も知らない現代SF作家である。
この頃は、「話題の日本SF作家を読んでみよう!」強化月間なので、評判の高い、この本を読んでみることにした。
不思議な話だった。
設定としてはSFなのだが、描写があまりに陰惨でホラー映画「ヘルレイザー」を想わせる。
ただ、人間がひとりも出てこないので、感情移入の先に困る作品だった。

舞台は見捨てられたリゾート地。
リゾート地といっても仮想現実で、住民はみんなAIである。
ある日、理由は分からないが、お客さんである人間が来なくなり、AIたちだけで数百年くらしている。
そのリゾート地に侵入者が現れる。
侵入者たちは、AIを喰らい、仮想空間を侵食していく。
生き残ったAIたちは、必死の抗戦を繰り広げるが・・・

まず、登場人物たちが全員AIなので、どう感情移入して良いかわからない。
とても人間的ではあるが、仮想空間の中のプログラムであることは間違いない。
謎の敵によって、すさまじい苦痛を与えられるのだが、AIなので共感するのが難しい。

このリゾート地がなぜ見捨てられれたのか、敵は何を狙っているのか、敵の敵は何者か?という疑問が残り、モヤモヤしたまま本書は終わってしまう。

本書の続編である「ラギッド・ガール」を読むと、いくつかの疑問が解消し、すっきりする。

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