図書館の魔女 第一巻

中世ヨーロッパのようであり、東洋のようでもある世界が舞台のファンタジーだ。
山で育てられた少年キリヒトは、先生である老人に言われ、図書館の魔女に仕えることになる。
図書館の魔女は、すべての知識を手中にする恐るべき存在だと思われている。
しかし、キリヒトが出会った魔女は、まだ少女だった。
そして図書館の魔女マツリカは、口がきけなかった。

だが、マツリカはその恐るべき量の知識を、手話を使って相手に伝えることができる。
キリヒトは、手話を理解できるが、文字を読めない。
なぜこのような少年が図書館に仕えることになったのか、最初は不思議だったが、キリヒトの能力が明らかになると、マツリカの疑問は、新しい希望に変わった。
キリヒトは、とても耳がよく、見えない相手を足音だけで状況を判別できる。
それだけでなく、周囲に対する観察力が鋭く、つねに先を読む。
マツリカは、キリヒトを自分の「声」にすべく、新しい手話を開発する。

言葉に関して深い考察のあるファンタジーだ。
言葉と文字、本との関係が延々と語らえる。
どこに行きたいのかまだ分からないが、普通のファンタジーと違うのは確かだ。

後半、マツリカとキリヒトが枯れた地下水道を探検するあたりは、ブラタモリを想わせる。
ただ、まだ何も事件が起こっていない感じだ。
4巻以上あるシリーズのようだが、今後の展開が気になる。

マツリカは一書を繙けば、その書物がむすびつくであろう数限りない書物を脳裏に参照して、巨大な書物同士の網の目を脳髄に刻み込んでいくのである。マツリカにとって書物という書物は、必ず他の何らかの書物についての書物であり、本と本が言葉を交わし合い、言葉を共有しあい、言葉によって響き合う、その局面にしかほとんど関心はなかった。
(中略)
彼女の中に「図書館」があった。

私が言いたいのはね、演者が琴を爪弾けば弾き様ひとつでありとあらゆる旋律を奏でることが出来る。そういう風に、私がお前を爪弾けばお前がその場で声にする、そんな風にやれないかと思っている。

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