つながる脳科学

「つながる」をキーワードにして、最新の脳科学のトピックを紹介している。
そうは言っても、2016年出版なので、ひょっとしたらもう古いかもしれない。
様々な切り口で脳科学の世界が紹介されているが、一番面白かったのは、ノーベル賞受賞者でもある利根川による「記憶」のトピックだった。
現代の科学では、偽の記憶を作り上げるところまで到達していた!
この本では、研究成果だけでなく研究の方法も面白い。

「記憶をつなげる脳」の中で使われるのは「状況依存的恐怖条件づけ」である。
マウスをケージに入れて電気を流す。マウスの記憶では、そのケージと恐怖が結びつく。
記憶によって物理的、科学的に脳が変化することを「痕跡(エングラム)」と呼ぶ。
そして、変化したニューロン群が「エングラム・セル」である。

まず、恐怖を感じる海馬のニューロン群を特定する。
光を当てるとニューロンが発火するように特殊なタンパク質で操作する。
電気を流したのとは違うケージにマウスを入れた時に、光ファイバーでニューロン群に光を当てると、恐怖が生まれる。
何の恐怖もない環境で、恐怖の記憶を発現したのだ。
ここまで出来るとは、現代科学の恐ろしさを感じるが、この延長で楽しい記憶を発生させることで、うつ病の治療に使える可能性がある。

「外界とつながる脳」の主人公はショウジョウバエである。
ヒトとショウジョウバエの遺伝子は、実は7割が同じである。
そして、ニューロンが少ないので研究に向いている。
人間のニューロンが1,000億以上なのに対し、ショウジョウバエは10万個である。
各ニューロンの位置をほぼ特定できる。
生きているショウジョウバエを使って、ニューロンの配線が解明できるのだ。
そのための実験として、ショウジョウバエ用の仮想空間を作っている。
羽ばたきの音から方向を推測し、映像を切り替え、ショウジョウバエが飛んでいると錯覚させるのだ。

脳の深部を研究するために、脳を透明化する研究が進んでいるらしい。

私たちの行った実験は、いわゆる光遺伝学(オプトジェネティクス)の応用です。簡単に説明すると、オプトジェネティクスは、特殊なタンパク質をニューロンに発現させて、光を当てるだけで、好きなタイミングで対象となるニューロンを興奮させたり、逆に抑制したりできるのです。わずか10年ほど前に開発された技術で、比較的自由に行動している実験動物を使って、神経回路を正確に操作したり、操作の影響を記録したりできます。

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