時の子供たち

面白かった。正統なるSF小説。
内紛により自滅しそうな人類は、テラフォーミングした惑星に、進化を促進した類人猿を放ち、自らの後継者としようとした。
しかし、過激派により実験は失敗。
猿たちは死に、知能を進化させるウイルスは、惑星土着の生物である蜘蛛たちの進化を促進した。

[以下は多分にネタバレを含む]

監視衛星に難を逃れたプロジェクトの推進者である女性科学者は、そんなこととは知らず、猿の進化を待つ長い年月のうちに、機械と同化していく。
地球を離れた避難船は、テラフォーミングされた惑星に移住を望むが、女性科学者の衛星のレイザー砲に追い返される。
独自の進化を遂げた蜘蛛たちは、ついに宇宙へと向かう。
その頃、移住に失敗した避難船は、最後の希望の地として、再度惑星に向かい、侵略を決意する。

進化する蜘蛛たちと宇宙を彷徨う避難船の歴史学者の視点で、交互に語られていき、最後には両者が交わる。
昆虫の文明社会も興味深いが、崩壊していく人類の文明社会とオンボロ避難船の確執も飽きさせない。
まだこんなにも正統で、面白いSF小説が読めるとは!

若くない二人のラブ・ストーリーでもある。
まさかのハッピーエンド。
これはアリだな、と思わせる。
そして、続編もある。
Netflixで映像化決定らしいが、主人公の半分は蜘蛛なのだが、どうするんだろう?

「ポッドシステム自体は最小限の電力で稼働しており、すべての機能を維持するために最善を尽くしてきたが、それでも犠牲になったものはある。
アヴラーナは目が見えず、断片化していて、どこで自分が終わってどこから機械が始まるのかよくわからない。
ポッドは多数のサブシステムのホスト役であり、それぞれのサブシステムはおおざっぱな自律性を有している──ぼんくらどもの共同体がすべてを荒っぽくまとめているわけだ。
彼女はその破片のひとつとして、鳥の繁殖地のように狭苦しく混み合った仮想空間に陣取っている。

「あなたを利用し、あなたに頼り、あなたと重荷を分かち合うこともできた。
あなたはロウソクのように燃え尽きていたでしょうね、おじいさん──でもなんのため? 
あたしがまだ老人で、あなたが死んでいる、そんなときを迎えるため? 
あたしはあなたを節約したかった。あなたを」ぐっと唇をかむ。
「キープしておきたかった。よくわからないけど、そんな感じだった。あなたをこのクソな状況に巻き込まないことで自分が前向きになれると思っていたのね」

蜘蛛というのは惑星のまわりで常に自由落下を続ける生活にはおあつらえ向きの種族だ。
生まれつき高所へのぼったり三次元で位置を確認したりすることに慣れている。
鋭い目と頭脳で正確に狙いを定めて後脚で力強く跳躍することができるし、たとえ失敗しても常に命綱を張っている。
不思議なことだが、ポーシャやほかの多くの者が考えていたとおり、蜘蛛は宇宙で暮らすために生まれてきたのだ。

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